左眼のうた
いつか恥づかしさに
その眼をつぶしたならば。
―― 彼は語るであらう
むかしのわたしの
卑怯と陰険と猜疑とを
さうしてさう教へこまれて
あげく一生の光を閉ぢた
彼の物語を語るであらう
その眼をつぶされたままにつぶりつつ
右眼のうた
左につりあげれば
へうきんなわらひをし
右によせれば深い憂欝を語る
ときどき花の雫のやうな
それがわらふその眼であつた
人にあこがれ人にあるものをいつさいに
憧憬でもない思慕でもない
私を愛してくれぬかといふ
夢をみるのはこの眼であらうよ
5/23/2010
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